碓井広義
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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

「浦沢直樹の漫勉neo 手塚治虫スペシャル」浦沢自身も実作者だからこそ巨匠のすごさが分かる

公開日: 更新日:

 17日の夜、NHK・BSプレミアムで「浦沢直樹の漫勉neo 手塚治虫スペシャル」が放送された。

「浦沢直樹の漫勉neo」は普段Eテレで放送されているが、これまで亡くなった漫画家を取り上げることはなかった。しかし手塚治虫は別格だ。今回はEテレで放送したものに未公開映像を加えた特別編だった。

 巨匠の“創作の秘密”に迫るための材料は主に3つ。手塚の生原稿、さまざまな資料、そして貴重な証言だ。番組には、石坂啓をはじめアシスタントを務めていた漫画家3人が登場した。

 盛り上がったのは、堀田あきおが保存していた「ブラックジャック」の描きかけ原稿のコピーが出てきた時だ。手塚は簡単な下描きだけで人物にペンを入れており、手にした浦沢は「ベタ(黒塗り)が入る前の〈描いてる感〉がすごい!」と大興奮だった。

 また雑誌「アサヒグラフ」を下敷き代わりにしていた手塚を浦沢が追体験。小指ではなく、手のひらの側面を紙の上に置いた、独特のペン遣いにもトライする。「柔らかな線になる」と驚きながら、アトムの顔をさらさらと描く浦沢。自身も実作者だからこそ、手塚のすごさが分かるのだ。

 さらに豊富な資料映像を駆使することで、手塚の仕事ぶりや人となりも伝わってくる。NHKならではの異色のドキュメントであり、見事なエンターテインメントだ。

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