「浦沢直樹の漫勉neo 手塚治虫スペシャル」浦沢自身も実作者だからこそ巨匠のすごさが分かる
17日の夜、NHK・BSプレミアムで「浦沢直樹の漫勉neo 手塚治虫スペシャル」が放送された。
「浦沢直樹の漫勉neo」は普段Eテレで放送されているが、これまで亡くなった漫画家を取り上げることはなかった。しかし手塚治虫は別格だ。今回はEテレで放送したものに未公開映像を加えた特別編だった。
巨匠の“創作の秘密”に迫るための材料は主に3つ。手塚の生原稿、さまざまな資料、そして貴重な証言だ。番組には、石坂啓をはじめアシスタントを務めていた漫画家3人が登場した。
盛り上がったのは、堀田あきおが保存していた「ブラックジャック」の描きかけ原稿のコピーが出てきた時だ。手塚は簡単な下描きだけで人物にペンを入れており、手にした浦沢は「ベタ(黒塗り)が入る前の〈描いてる感〉がすごい!」と大興奮だった。
また雑誌「アサヒグラフ」を下敷き代わりにしていた手塚を浦沢が追体験。小指ではなく、手のひらの側面を紙の上に置いた、独特のペン遣いにもトライする。「柔らかな線になる」と驚きながら、アトムの顔をさらさらと描く浦沢。自身も実作者だからこそ、手塚のすごさが分かるのだ。
さらに豊富な資料映像を駆使することで、手塚の仕事ぶりや人となりも伝わってくる。NHKならではの異色のドキュメントであり、見事なエンターテインメントだ。