変なことをしたい欲望 片桐はいりは感情に「!?」のつく最上級の喜びを求め続ける
むしろ、一貫して同様のことを言い続けている。「いい男に迫るみたいな役がしょっちゅうあるんですよ。私はいつも思うんですけど、男の人ってそんなにブサイクな人に迫られるっていう経験がいっぱいあるんですか?」(TBS系「サワコの朝」16年9月17日)と皮肉まじりに言ったこともある。それでも、いまだに「男社会」でつくられる女性像は狭いままだ。
片桐は幼少期、「白鳥の湖」に魅了され、バレエを始めようとしたが、バレエ教室で自分とは真逆の顔の小さな人たちを見て、自分には無理と「初めての挫折」を味わった。だが、表現欲は収まらず、大学で演劇を始めた。初舞台では泣いたという。「感動で」ではない。「つまらなくて」がっかりしたのだ。そんなはずはない、と思い続けて、芝居の世界にどっぷり漬かっていった。
「ある人の人生を忠実に再現するとか、台本をより感動するように表現するというようなことにはそんなに興味がなくて、変なことをしたい。それだけの欲望なんだと思う」(同前)と片桐は言う。だから、彼女は半分自動販売機女、人類が生まれる前から地球に住んでいた役、宇宙人、閻魔大王、丸呑みの女王様、お地蔵さん、木……など、いろいろな変な役を演じ続けている。
「ん、なんだ!?」のように「!?」がつく感情になるのが「最上級の喜び」で「私はそれを求めている」(同前)と彼女は言う。そうやって片桐はいりは見る者の頭にさまざまな「!?」をつくり続けているのだ。