竹下景子がピュリツァー賞受賞の名作コメディーに挑戦 「演劇人として対話の力を信じたい」
俳優は言葉を介して思いを伝える職業
──息子さん(関口まなと・関口アナン)は2人とも俳優ですが。
「アナンはこの舞台の1つ前の加藤健一事務所の作品に出させていただきました。美術系の大学に行ったのにいつの間にか役者になって。私の出身地・愛知の名物女将の一代記を描いた『まるは食堂』では孫役、続編では息子役で2回共演しました。役作りは必要なかったですね(笑)」
──去年出演した舞台「5月35日」では天安門事件で死んだ息子を追悼するために立ち入り禁止の天安門に向かう余命わずかの老女を演じて好評でした。以前、「非戦を選ぶ演劇人の会」の朗読劇に参加しましたが。
「俳優は言葉を介して思いを伝える職業です。ウクライナ問題を見ても世界の分断と対立が拡大していると思います。私は演劇に携わる者として武器ではなく対話の力を信じたい。口幅ったい言い方かもしれませんが、平和のためにわずかでも行動を起こすのが演劇人としての役割ではないでしょうか」
──最近、ハマっていることは?
「思うところあって、去年の夏に日本で唯一という足の専門病院で講習を受けたんです。足の健康イコール健康寿命というのが分かって毎日、飼ってる保護犬と一緒に朝晩2回、2時間くらい散歩するんです。『ほら月がきれいだよ』と語りかけながら。そうすると、尻尾を振ってくれる。一日で一番楽しい時間ですね。その規則正しいウオーキングでちょっと不安だった足の調子も良くなりました」
──今回の舞台では情熱的な老人役ですが。
「年を重ねて物わかりがよくてというだけではない、アグレッシブな部分があったり、一つ所におさまりきれない部分があるほうが人生楽しいじゃないですか。嫌なことには嫌とズバッといえるような……。舞台の老女もゲームが進むにつれて熱くなっていきます。その変化も見てほしいですね」
(取材・文=山田勝仁)
◆加藤健一事務所「ジン・ゲーム」(作=D・L・コバーン、訳=吉原豊司、演出=小笠原響)は6月29日~7月9日、下北沢・本多劇場で。