ジャニーズの性加害報告書で異例の「メディアの責任」が盛り込まれた根深い背景
司法記者の間でささやかれていたのは、特別チームの座長を務めた林真琴前検事総長(66)の思いがあったのではないか、との指摘だ。
「林さんは早くから検事総長に就く人物と目され、法務省刑事局長から事務次官になるはずだったが、当時の安倍官邸がこの人事をはねつけ、菅官房長官と近しかった法務省官房長の黒川さんを次官にした。そして、名古屋高検検事長に就いた林さんがいよいよ検事総長に、という時に出てきたのが突然の検察官の定年延長という話。政権の守護神と言われた黒川さんを何が何でも検事総長にしたいという安倍官邸の意向だったわけですが、ここまで恣意的だと法治国家でも何でもない。しかし、当時のメディアは皆、官邸ににらまれるのが怖くて真正面から批判しなかった。結局、黒川さんは記者とのマージャン賭博が報じられ、定年延長の改正法案も流れたわけですが、林さんはこの時のメディアのふがいなさ、強いものに弱腰の報道姿勢に呆れたのではないか」(週刊誌記者)
報告書があえて「マスメディアの沈黙」と題したのも、報道機関に対して「沈黙していいのか」「傍観者でいいのか」という叱咤激励する意味が込められていたのかもしれない。