「ゴダイゴ」リーダー・ミッキー吉野さんに自由を教えてくれたリトル・リチャードのロックンロール「Send Me Some Lovin'」
ザ・ゴールデン・カップス時代に芸能界の理不尽を味わった
16歳でゴールデン・カップスに入ってわずか2年半でしたが、当時はいろいろと理不尽なことを経験して、ひどい思いをしたことがありましたね。この状況はどうにもならないと思ったことが、アメリカに飛び出した理由でもあった。
その時に、これは何かが違うと思いましたね。僕のエネルギーになっているのはロックンロールです。ロックンロールは親や社会への反発をぶつけることで出てくる。髪を伸ばしていると、ハサミを持った先生に追いかけられて切られるとか、楽器をやっていたら不良といわれる……それへの反発です。
ゴールデン・カップスで歌がヒットしたのはありがたかったけど、なんでこんな歌謡曲みたいな曲をやらなきゃいけないのかという疑問がいつもあった。結局、その反対にあるのがロックンロール。それを教えてくれたのは小学生で弾いたロックンロール、リトル・リチャード「Send」とかだったと思う。音楽は自由にやっていいんだよ、という。
帰国してミッキー吉野グループを結成し、タケカワユキヒデが加わる形でゴダイゴを結成しました。ゴダイゴはまだ見えていない可能性を目標にしました。売れなきゃバンドをやっても仕方がないから、売れるようにするにはどうすればいいかも考えました。ゴールデン・カップス、日本の芸能界の現状、バークリーで学んだことを全部取り入れて作る。
■「西遊記」は業界の常識にこだわらなかった
例えば、マーケティングひとつとっても、考えましたね。レコードが全国に行き届かないと売れないから、どのレコード会社が全国に営業所を一番多く持っているかなどを調べた。その時はビクターや日本コロムビアでした。それでゴダイゴは日本コロムビアからデビューしたんです。一番ヒットした「西遊記」は自由奔放に作らせていただきました。ドラマ「西遊記」の劇伴はまず歌ものを中心に作り、シンセサイザーやマイクロコンピューターを多用して劇伴化。当時の日本の音楽業界の常識ではあり得なかったアルバムです。要するに、ロックンロールのように従来の枠組みにこだわらずにやるという発想です。リトル・リチャードの「Send」に代表されるようなロックンロールの自由とエネルギーがそこにはあった。楽しかったですね。
僕も古希でアルバムを作りました。コロナ禍だったので、スタジオに行かないでメールでやりとりをしながら制作しました。同録でないことについても、違和感はありませんでした。そのことについていろんな言われ方をするけど、それはそれでいいんじゃないでしょうか。でも、大切にしていることもあります。例えばですが、今はイントロがあると聴かずに飛ばされるみたいだけど、僕はイントロ勝負です。イントロでいかに多くの聴く人をキャッチするか。ゴダイゴはちゃんとしたイントロがあって、アレンジも曲の一部という考え方でした。僕が作って布施明さんが歌った「君は薔薇より美しい」はSNSでは「変わった」というところだけがブレークしているみたいだし(笑)。聴く人も自由になったのはいいことだと思いますけどね。
(聞き手・峯田淳/日刊ゲンダイ)
■「ミッキー吉野【Keep On Kickin' It】」
「銀河鉄道999feat.MIYAVI」や「ガンダーラfeat.タケカワユキヒデ」など全10曲を収録。JUJU、SHOKICHI、STUTS、Campanella、MIYAVI、Char、タケカワユキヒデ、Mummy-D、岡村靖幸らが参加。