二兎社「パートタイマー・秋子」は「忖度・不正社会」をブラックな笑いで撃つ
秋子の見た店の内実はパートたちが店の商品を無断で持ち帰ったり、店長が、賞味期限間近の肉をパックし直したり、倫理感が欠如している。
青年座による初演は2003年。大手食品メーカーの牛肉偽装事件があった頃だ。これ以降、賞味期限偽装、大吟醸酒原材料偽装など、毎年のように企業の不祥事が続いた。この企業倫理の欠如が政界にまで波及したのは安倍政権以降が顕著だ。公文書改ざんという国家的「偽装」にまで及んだのは知っての通り。
永井愛は単なる告発劇ではなく、同調圧力で不正に手を染めてしまったり、自己正当化する人間の弱さにも焦点を当てた。
その象徴が秋子。最初はパート仲間の不正に対して嫌悪感を持っていたのに、日常化すると次第に鈍感になり、そして自らも……。
周りから浮いてしまうセレブ妻役がぴったりの沢口は自分の手が汚れそうになりながら踏みとどまろうとする秋子を好演した。
忖度・不正社会に対する強烈なブラックユーモアであり、亀田、生瀬ら芸達者たちの絶妙なアンサンブルで笑いの絶えない舞台となった。ほかに水野あや、稲村梓、関谷美香子、石井愃一ら。
2月4日まで東京芸術劇場シアターウエスト。その後全国巡演。★★★★