GACKT「25年食べない派」と田中みな実「1日3合の爆食派」美のカリスマ“コメ論争”どっちが正しい?
田中みな実は肉より米の食生活
続いて、田中みな実さんの食生活です。コメ好きを公言する彼女は、1日に2~3合を食べているそう。また、夜はほとんど外食をせず自炊生活を実践。肉の塊は8年くらい食べておらず、脂質を多く摂らないように、たんぱく質は大豆や魚から摂取するという徹底ぶりです。
「コメを1日2~3合食べている」「肉の塊は8年くらい食べていない」「たんぱく質は大豆や魚から摂取する」という他には、以下のような食習慣を実践しているとのことです。
・朝に旬の果物をたっぷり食べる
・外食は1か月に2~3回あるかないかの頻度
・揚げ物や肉の脂など脂質を多く摂らないように気をつける
・緑黄色野菜や根菜で副菜を常備して食べている
・間食をなるべくしない
・毎日3リットルの水を飲む
彼女の発言で誤解してはいけないのは、コメの多食が美の秘訣である、という単純なものでは必ずしもないこと。1日3合の白米は1611キロカロリー、糖質量は350グラムです。成人男女の炭水化物の食事摂取基準(%エネルギー)は食事全体の50~65%(厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」から)ですから、スリムな体型を維持している田中さんの摂取量は基準を大きく超えていると考えられます。言い換えると、レース直前に炭水化物を意識的に摂取するようなマラソン選手に近い“糖質過多”な食事を実践しているため、たんぱく質などほかの栄養素不足につながる心配も出てくるでしょう。ですから、田中さんのような食事をしてスタイルや健康を保つことは奇跡に近く、糖尿病患者が増えている現代において、この食べ方を推奨する専門家はいないと言っても過言ではありません。
しかしながら、この2人の食生活は、コメ食の点だけ見れば真逆に見えるものの、実は根源的な部分で共通点が2つあります。それは、コメ自体は好きであること。そして、自分の目標や高いパフォーマンスを実行するために日々の食生活を厳しくコントロールしていることです。つまり、コメを食べようが食べまいが、自身のライフスタイルを踏まえて食事を総合的に管理していることが、2人の発言からも推測・考察できます。
それではそこまでストイックになれない一般人にとって、健康や美容のために米とどう付き合ったらいいのでしょうか?コメの健康効果や食べる時の注意点について簡単にまとめてみましょう。
■白米はほんとうに悪なのか?
コメはパン食に比べると咀嚼回数が多く、血糖値の上昇がゆるやかであることがわかっています。また、主食単体でみた時に塩分や油脂が含まれず、ヘルシーな和食との相性も良いこと、さらに最新の研究では腸内環境を改善したり、コレステロール値を下げるなどの健康効果も報告されています。これらのことからも、コメは身体に良いと解釈することができ、バランスよく適度に食べることができれば悪者ではないのです。最後に、これだけは絶対に知っておくべき米に関わるトピックスを整理しました。
・糖質は脳の活動維持のためにある程度は必要
身体を動かすためのエネルギーは、たんぱく質等の他の栄養素でも代わりになりますが、脳にとってのエネルギー源はほぼ糖質。私たちが摂取するエネルギーの4分の1は脳で使われるため、過剰な糖質オフは脳の機能が正常に維持できないことにつながります。一般的な女性の1日に必要な栄養摂取量が1600キロカロリーとすれば、1日100グラム、1食30グラムの糖質は必要で、1食の食事で換算すればごはん茶碗小盛1杯か、コンビニおにぎり1個分になります。
・「白米は悪くて玄米なら良し」とは言い切れない
白米はなにかと悪者扱いされがちですが、そうとも言い切れません。体調が悪い時などに消化の良さは大きなメリットになることもあり、玄米と比べればビタミンやミネラル、食物繊維が豊富ではないものの、おかずが充実していれば食事全体としては問題ありません。むしろ玄米であっても白米であっても、食べ過ぎないことの方が重要です。
いかがでしたでしょうか。2人の食生活をきっかけに、自分自身がコメとどう付き合っていくかは改めて考えてみても損はないでしょう。いずれにしても、両者のような極端な食べ方は禁物です。
▽スギアカツキ 食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。https:/twitter.com/akatsukinohana