『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』独裁者に心酔し国民を戦争と虐殺に駆り立てた男の末路
邦題は「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」だが、原題は「Führer und Verführer」。直訳すると「総統と誘惑者」で、この原題のほうがふさわしい気がする。というのは宣伝男ゲッベルスの単なる成功譚ではなく、彼が地位を利用して女性部下や女優に好色ぶりを発揮し、ライバルたちに成功を妨害され、ヒトラーに睨まれ、それでもヒトラーの信頼を回復し、最後はヒトラーと“心中”するという有為転変の物語だからだ。
ゲッベルスはいくつもの恐るべき方針を打ち出す。ポーランドを攻撃するや、部下を集めて今後の政策は「戦争を行うためのもので、情報を与えるものではない」と宣言。外国のラジオ放送を禁止し、「我々が怒りをあおり、動揺と嫌悪感を植え付ける」との方針を打ち出す。ニセ情報によるプロパガンダを推し進めていくわけだ。同時にヒトラーを実像以上に偉大な存在に見せるための演出を考案し、新聞・ラジオなどのメディアを思うままにコントロールする。
このあたりは大戦中の日本の軍部にきわめてよく似ている。その延長線上にトランプや立花孝志がいるのかもしれない。