ヌード前夜は下着を着けずに寝るということも知らなかった
大西結花編 <8>
15歳で上京し、二十歳をいくつか過ぎるまで、仕事から仕事へと駆け回った。タレントの「大西結花」で1日24時間、1年365日間を過ごしていた。
少しほっと一息つけたのが、23か24歳になるくらいの頃。時間を見つけては愛車でひとりドライブした。思い立ったら、ハンドルを握った。行き先は友だちの家とか、思いついた場所など行き当たりばったりで、誰にも見られず、好きな音楽を聴きながら、羽を伸ばせる時間が好きだった。
バーに飲みに行ったりもした。初めて「飲みに行く」ということに胸が高鳴った。と同時に誰かに見つかったらどうしよう、という気持ちにもなった。成人しているので、お酒を飲むことはいけないことではない。しかし、盛り場に行くような行動自体、アイドルには許されないことのように言われてきたし、なによりもお酒を飲んだことなどないに等しい私が飲みに行くなんて!
友だちはお酒、飲めない私はコーラだったけれど、自分も大人の仲間入りをしたような気になってうれしかった。もう十分大人の年齢なのだけれど、このような経験のない私にとっては、とても貴重な、大人の時間だったのだ。隣では同世代の友だちがお酒をおいしそうに飲んで、楽しんでいる。その姿がかっこよく、羨ましくもなった。周りに気づかれないようにキャップを深くかぶり、ほとんど顔を上げたりもしないまま、バーでの短い時間が過ぎた。そんなふうにこっそりすることも初めての経験だったし、スリルだった。