心臓外科医が教える患者のための基礎知識(3)心臓のあたりが痛い…大概は「逆流性食道炎」
「心臓病が心配です!」と言って患者さんが受診してきます。
どうして心臓病が心配なのか、その根拠を聞くと「心臓のあたりが痛いです」。
なるほど、それは心臓病が原因かも知れません。しかし、大概は逆流性食道炎という状態です。酸性度の強い胃液がときおり逆流して食道に流れ込んでしまうと、息苦しい感覚に襲われたり、みぞおちや背中、左乳首の上あたりにキリキリとした痛みを感じてしまうことがあります。通称、ガード(GERD)と呼ばれています。
こんなふうに、心臓病かも知れない、という症状を引き起こすのは、逆流性食道炎以外にも胆石症、気胸などたくさんあります。いろいろと可能性があるので「犯人捜し」は簡単ではありません。胃カメラでのぞいても、あまり情報は得られません。逆流性食道炎が起こっていても、胃カメラで観察しても胃や食道の粘膜が「これはヒドイ!」となっているとは限らないのです。
まずは胃酸を抑える薬を飲んで様子を見ます。心臓病の治療を受けるつもりで来た患者さんに、胃や食道、胆のう、肺といった他の臓器の病気も疑う必要があるのです。