汚染された水田の除染 開発のルーツは福島第1原発事故の避難区域の復興支援

公開日: 更新日:

セシウム吸着のアイデアを応用

 近大工学部(広島県東広島市)の井原辰彦教授(当時=無機材料化学)らと取り組んだのは、放射性物質セシウムに汚染された水田の除染だった。土壌中のセシウムを電気化学的方法で分離・除去しようと実験を重ねた。

「その際、検討したのが、無数の細かい穴を持つ多孔質のアルミニウム材を電極に用いて、セシウムを吸着するアイデアでした。セシウム除去という点では成就しませんでしたが、福島第1原発にたまり続けるトリチウム水の分離・除去技術に応用できるのではないかと着目しました。16年ごろのことです」(山西氏)

 約2年後、民間企業と連携し、井原氏が中心となって研究を進めた成果が発表された。「トリチウム水を分離・回収する方法及び装置を開発」──。超微細な穴を多数持つアルミニウムの粉末を加工したフィルターにトリチウム水を通すと「初期段階でほぼ100%」という高い効率でトリチウムを分離できたとうたっていた。

「そのようなリリース内容でしたが、実用には遠くて、ちょっと言い過ぎかなと思いました。1時間に処理できる量が微小でしたから」

 共同研究者の山西氏は、やはり柔和な表情で淡々と語るのだった。=つづく

(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  2. 2

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  3. 3

    テレ朝ナスD“経費横領&パワハラ処分”に「見せしめ」の声も…家族団らん投稿の美人料理家妻に同情集まる

  4. 4

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 5

    東原亜希の“黒帯バスローブ密会”乗り越えた「許す力」は佐々木希以上? 経済的自立も目指す強心臓とたくましさ

  1. 6

    料理研究家の森崎友紀 “本業”専念も恋愛は「年も年なので」

  2. 7

    兵庫県パワハラ知事に残った選択肢は「議会解散」のみ…多数派工作で延命図るか?味方は“情報漏洩3人組”のみ

  3. 8

    あす旧統一教会に解散命令か? N国党に急接近の不気味、タダでは転ばない悪あがき

  4. 9

    巨人の“アキレス腱”は絶対的セットアッパーが使えないこと…新助っ人キャベッジで外国人枠「満員」

  5. 10

    佐々木希が「芸能人格付けチェック」で"地雷キャラ"といじられ…夫・渡部建を捨てないもう1つの理由