水戸市立西部図書館(茨城県)円形の壁面と同心円状に重なる書架はまるで本の回廊
住宅街を抜けると、青々とした芝生が目に鮮やかな市民運動場が見えてくる。広場をグルリと囲むように回廊が配され、その中央に中世ヨーロッパ建築を思わせるレンガ調円形ドーム型の建物が鎮座する。平成4年に開館した水戸市立西部図書館だ。
圧倒されるのは外観だけではない。2階建ての館内は中央が吹き抜けになっており、その高さ13メートル。円形の壁面は上から下まで全部が書架、さらに同心円状に重ねて書架を配置しているので、歩いていると本の回廊に迷い込んだような錯覚に陥る。
「設計者は横浜赤レンガ倉庫2号などを手がけた新居千秋氏で、1993年に建築業界の芥川賞といわれる『吉田五十八賞』を受賞しました。階段の手すりは鉄骨、ドアの取っ手は曲線を意識したレバー式など、細部にわたってデザインが施されているんですよ」と館長の笹川直樹氏が言う。
蔵書は約11万冊。1階は文学や芸術、スポーツ、雑誌など一般書籍と児童書。2階は、哲学や歴史、地理、政治・社会など大人向けの書籍が置かれている。特に充実しているのが、法律関係だ。
「元水戸市長で法学者だった故佐川一信氏から寄贈を受けた、判例集や労働法などの図書・雑誌など約4700冊を『佐川文庫』として特別コレクションとしています。またイベントにも力を入れていて、たとえば夏は『夜の図書館探検』、普段でしたらクラフト教室や、『終活セミナー』などを開催しています」