コラムニスト石原壮一郎さん 伊勢うどん愛を語り尽くす「きっかけはコシ至上主義への反発」
今は誰もがいつ自分が「責められる側」「いじめられる側」になるかわからないという恐怖心を抱えています。世間の風向きに合わせて「あの失言はマズイよね」と言っている分には「いじめる側」という安全地帯にいることができるので、みんな正論や建前が大好きになりました。
明らかにイビツな状況です。このままではますます疑心暗鬼にまみれた窮屈で息苦しい社会になっていく一方です。
少しでも歯止めをかけるためには、もっともっと「伊勢うどんスピリット」を広めていかなければなりません。伊勢うどんを食べれば、自分とは違う価値観をおおらかに受け止めることや、ふんわり絡まり合う大切さを感じることができます。
多くの人がそんな体験をし、もっと寛容になろうという機運が広まっていけば、世の中のギスギスした雰囲気がふんわりした方向に変わっていくかもしれません。いや、きっと変わります。
そもそも伊勢うどんはすぐに体が温まって、消化がよく胃に負担をかけないことから、長い道のりを歩いて旅してきたお伊勢さんの参拝客に親しまれてきました。いわば伊勢うどんの丼には、やさしさとおもてなしの心が詰まっています。