北区十条「大衆酒場斎藤」100年の味がしみ込んだ熱々の肉豆腐に冷えた体が温まる
埼京線に湘南新宿ラインがつながって、横浜方面からも大宮方面に行くことが楽になった。
さいたま新都心にかけて発展する一方、昭和の面影を残す場所が減った。時代の流れと思うしかないのかな。それを実感したのは十条駅前のどデカいタワーマンションを見たからかもしれない。願わくば開発はここまでにしてもらいたい。勝手なことを願っているアタシです。
でもね、十条には、まだまだ昭和が残っているのですよ。というか、ほとんどが昭和といってもいいくらい。長いアーケード街には個人商店が多く、そこから枝葉のように延びている路地には昔ながらの酒場やスナックがある。
以前と違うところはベンガル系食材の店が増えたこと。東十条にはバングラデシュの人たちのコミュニティーがあるからだ。店頭でビリヤニのテイクアウトってなかなかいいよ。「今夜はビリヤニとタンドリーチキンにでもしようかな」みたいなお母さんたちが普通にいるんだろうな。
さて、駅からすぐのプチロードという、その名の通り小さな路地に昭和3年から店を構えている酒場がある。「大衆酒場斎藤」だ。
開店の4時半少し前に一番乗りで待っていると、勝手口の方からいい匂いがしてくる。煮物を炊く匂いだ。これはたまらん。北風の中で待っているアタシには酷だ。すると暖簾がかけられ、店内へ。アタシは右手前から、奥に案内された。
店内はまるで「用心棒」に出てくる居酒屋のよう。無造作に置かれた古いテーブルには複数の常連客が勝手知ったる様子で席についている。大木をぶった切っただけのような武骨なテーブルは、人々の手の脂と酒がしみ込み、つやつやして角が丸くなっている。3代目の女将がてきぱき注文を取り始めた。1組の若いカップルを除き、14、15人の客のほとんどは地元の大先輩ばかり。早い時間から一杯やろうってわけだ。