100時間カレー 米田周平社長(3)「カレーハウスCoCo壱番屋」1強の市場に狙いを定めた緻密な計算
「シェアを奪う」のではなく「新たにつくる」
「カレーのチェーン店はカレーハウスCoCo壱番屋さんだけが1000店舗を超えていて、他は100店舗以下(当時)でした。でも、国民食というぐらいだから潜在需要は高いはず。そこで考えたのが市場のシェアを奪うのではなく『新たな市場をつくること』です。例えば2つの人気ラーメン屋を100人が食べ比べたとして、好みが100対0になることはないと思うんです。つまり1強ならば違う味を好む層が潜んでいるはず。私たちはその市場を広げることを命題に掲げました」
アークスが目指したのは、家庭では食べられない、舌にうまみが残るようなコクの深いカレーだ。そもそもカレーは「母の味」といわれるほど家庭に定着した料理。わざわざ外で食べるものでもないから、というのも市場が大きくならない理由のひとつと言える。「それなら、わざわざ外で食べたいと思うカレーをつくればいい」と考えたのだと米田氏は言う。
メニュー開発は素谷氏を中心に行われた。「舌に残るコク深さ」を追求して何百回と試行錯誤を重ねたという。そして2013年6月、会社があった東京の武蔵小山駅の近くに第1号店となるたった7坪の店「B&R」をオープンした。
「その後、時を置かずに神田店を出店。店名も『100時間カレー(100HOURS CURRY)』に改めました」と米田氏。その名には飴色になるまで炒めた香味野菜や果物と、トロトロになるまでじっくり煮込んだ牛の出汁を合わせ、時間をかけてスパイスを浸透させること、そしてそれをさらに冷温で数日間寝かせて熟成させていくという手間をかけたカレーへの自信と情熱が込められている。
100時間カレーに対する消費者の反応は早かった。翌14年には、現在約500店舗のカレー提供店がひしめく東京の神田・神保町で開催される「神田カレーグランプリ」でグランプリを獲得。その後も15年には準グランプリを、16年には大会初という2度目のグランプリを達成している。=つづく
(ジャーナリスト・中川明紀)