「うまい棒」でおなじみ駄菓子の老舗やおきん ヒット商品作りの極意は「購買層に合わせない」
子供と駄菓子の関係に変化
──さまざまな試みをしていますが、長期的な課題は。
「いまの子供たちが駄菓子に対し、我々の少年期と同様の熱量、愛着を持ってくれているか──という漠然とした危機感があります。我々が小学生のころは、お小遣いを握りしめては友達と駄菓子屋に集まっていました。金銭的に限られた選択肢の中から組み合わせを考えて、その時に買えなかった駄菓子は次の楽しみにしたり、最後の10円で金券入りの商品を買ってみたり。人生初のギャンブルは駄菓子でした。あの空間でたくさんのことを学びました」(田中さん)
──しかし、子供たちの“拠点”であった駄菓子屋は減る一方です。
「子供たちと駄菓子の関係は昔と大きく変化しました。ご両親の買い物のついでに買ってもらったり、『大人買い』で家庭に駄菓子があふれているケースも。ありがたいことですが、駄菓子を選んだり、食べたりすることへの熱量は……。だからこそ、商品開発は主な購買層である30~40代に合わせるだけではいけません。いかに子供の心を掴む商品、キャンペーンの企画を考えています」(田中さん)
──具体的には。
「19年、日本記念日協会さんに11月11日を『うまい棒の日』に登録してもらいました。以降、『うまい棒総選挙』など、ネットから親子で気軽に参加できる景品付きのイベントを毎年行っています。また、当日に合わせて会社のホームページに『うまい棒川柳』のページを特設し、キッズ賞なども用意。皆さまにより親しんでいただけるように取り組んでいます」(小野さん)
──23年10月、ファンサイト「カシフリーク」が開設されました。
「カシフリークに登録すると、デジタルの会員証とランクを表すバッジが与えられ、イベントに参加するごとにどんどんランクが上がっていく仕組みです。コロナ禍が明けたので、これからは親子で楽しめるリアルイベントを打ちだし、ファンと一緒に駄菓子を盛り上げていきたい。24年はうまい棒45周年に絡めて特別キャンペーンを計画しています!」(小野さん)
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次の世代に、情熱のバトンを渡してみせる。
(聞き手=杉田帆崇/日刊ゲンダイ)