ニチイHD(下)トラブルの発端は2019年…創業家の相続税対策でファンドの餌食に
創業者の寺田明彦氏が2019年9月28日、膵臓がんのため83歳で亡くなったのがトラブルの発端である。寺田氏は企業による本格的な介護サービスを国内で最初に始めた。長野県出身で1957年、早稲田大学教育学部を中退。68年に起業し、医療事務受託事業に手を染めた。73年保育総合学院(75年にニチイ学館に社名変更)を設立、介護事業に乗り出した。99年東証2部に上場(2002年東証1部に昇格)した。
明彦氏は親族に当時の時価で200億円超といわれたニチイ学館の株式を残した。
納付する相続税は莫大だった。市場で持ち株を売却・換金すれば株価が暴落する。創業者一族が保有する株式を会社が買い上げて自社株とする方法があるが、これだと、創業家は大株主でなくなり、経営から外れざるを得なくなる。寺田家はこれは避けたい、と考えた。
そこであみ出されたウルトラCがMBO(経営陣が参加する買収)だった。
株式を相続した息子ら親族と、資産管理会社、ニチイ学館の森信介社長が20年5月、米ファンドのベインキャピタルと組んでMBOを表明した。TOB価格は5月7日の終値価格に37%のプレミアムを乗せ、1株1500円とした。