主力製品ではない手回し式の小型焙煎器「くるくるカンカン」をどうしても造りたかった富士珈機のこだわり
福島達男さん(富士珈機社長)=後編
プロ向けコーヒー機器メーカーが本気で造った手回し式の小型焙煎器「くるくるカンカン」。キャンプなどで愛用する通が増えているが、考えたのは富士珈機4代目社長の福島達男さんだ。
フジローヤルのブランド名で知られる同社の歴史は、そのまま昭和のコーヒー文化の歴史と重なる。
「神戸のコーヒー輸入商が昭和5年に当時珍しかった喫茶店を銀座で開店。そこに入社したのが弊社の前身となる富士珈琲機械製作所の創業者です。店先で焙煎を担当しながら、コーヒーについて学んだそうです」
富士珈琲機械製作所が設立されたのは、戦争で途絶えていたコーヒー豆の輸入が再開された昭和25年。その販売会社として昭和30年に創業したのが富士珈機だ(当時の社名は富士珈機販売)。
「昭和40年から50年ごろにかけて喫茶店ブームが起こりました。コーヒーはまだ家で飲むものではなく、喫茶店で飲むのが当たり前の時代。最盛期には15万軒以上の喫茶店が全国にできました。そこで使われたのが弊社の電動ミル。軽くてモーターが焼けない、つまり壊れないミルとして評判になり、圧倒的なシェアを占めるようになったのです」
そのミルは現在も販売中。同社ショールームで実物を見せてもらうと、確かにレトロな喫茶店でよく見かける。昭和のコーヒーブームを縁の下で支えてきた名脇役だ。