雪道だからこそ分かったマツダCX-80の本質 実は理想のFR味ドリフト4駆マシンだった!
マツダ CX-80(車両価格:¥3,943,500/税込み~)
人間の本当の性格が修羅場で分かるように、クルマのキャラが厳しい環境で露呈することがタマにある。先日つくづくそう思わされたのが、まだ都会で大雪も降る3月に、北海道で乗ったマツダCX-80の4WDだ。
去年発売のミニバン代わりにもなる同社入魂の大型SUVで、最大7人乗れる3列シート配列が売り。
同時に兄弟SUVのCX-60もそうだが、イマドキあり得ないディーゼル6気筒ターボを完全新作し、それを珍しくフロントに縦置きレイアウトする。
もちろん一部電動のマイルドハイブリッドやPHEV仕様も選べるが、核はロングノーズの直6ディーゼル4駆モデル。
なぜマツダはスペース効率に優れず、排気音も大きいエンジンSUVをこの電動化の時代に作るのか? 正直良く分かってない部分があったが、雪道で走ると素直に理解できた。単純に運転が楽しく、しかも安全なのである。まさに姿を変えたスポーツカーと言ってもいい。
北海道で乗ったのはディーゼル4駆のCX-80XDエクスクルーシブモード4WD。輸入SUVなら800万円はする全長5m弱の立派な体躯を持ち、231psで500Nmの本格3.3ℓディーゼルターボを搭載。価格は530万円からと中身を考えると安いが絶対的には安くない。
高速でも低速でも驚くほど自然に舵が効く
まず見た目は確かに彫刻的なロングノーズフォルムで、メルセデス・ベンツやBMWにも負けない存在感。そこまではいい。
ただ、雪道で走り出すと予想と全然違うのだ。ステアリングがスポーツカーのように軽くナチュラルで、思ったようにグイグイ曲がっていく。これは曰く言い難い感覚で、大抵のこの手の大型SUVは、雪道で曲がらない。特に走り始めはフロントタイヤが雪面の滑りやすさに負け、真っ直ぐ進みがち。それをなんとかステアリングアクションを駆使しながら、ノーズを食いつかせるのが雪道の常だ。
ところがCX-80XD 4WDは高速でも低速でも驚くほど自然に舵が効く。しかも怖くない。
なぜかとエンジニアに尋ねたら、なんと普通の4WDは5対5ぐらい設定している、エンジンの前後トルク配分を本当のごく初期は1対9もしくは3対7にしているという。
ええっ、マジか? と思った。正直、それじゃリア駆動のスポーツカー並みじゃないのと! と。リアタイヤで100%駆動するFR車はどんなに滑りやすい道でもフロントを軸に、リアタイヤから曲がっていく感覚があって非常にコントロールしやすくて楽しい。ただ、そうするとすぐにリアタイヤがドリフト(横滑り)してしまうことがある。
しかし心配ご無用。CX-80 4WDはリアが滑るか滑りかけた瞬間、優れた電子制御が前後トルク配分を瞬時に5:5にして安定させる。どんなに滑りやすい路面でも破綻することはない。そのようにある意味、FR車と4WD車のイイトコ取りをしているのがCX-80の走りの本質なのだ。
見た目がリッパで欧州プレミアムのようにデカいだけじゃない。縦置きエンジンにして、前後重量バランスを整え、リア駆動寄りの4WDレイアウトにしたのもすべては走りとスタイリングのため。
既存のスペースだけを追ったミニバンのようなSUVとはCX-80は根本的に違う。ある意味、嗜好のラージサイズSUVなのだ。
CX-80の本当の良さは雪道だからこそわかった
で、この楽しさと安全を両立した走り味は日常的なドライ路面でも同じだが、正直この繊細さであり、ステアリングフィールの良さが目立ち難い。
長距離を走ると疲れにくさであり、バランスの良さがシミジミとカラダに染み渡るが、ぶっちゃけ、街で5分乗っただけではCX-80の本当の良さはわからないはず。繊細でリスキーな雪道だからこそわかったのである。
実は自分の伴侶を選ぶ時も「一度は一緒に旅行に行け」とか「両親にあって環境を知れ」という話がある。特定のシチュエーションにより、その人となりであり、本質が垣間見えることがあるからだ。
正直言うと、欲しいと思ったクルマで買う前に雪道に行くのは容易ではない。だが理想論を言うと、ちと厳しい環境で試乗できたらいいのにな……と思った次第である。