日韓関係の改善は「政治的信念」という尹錫悦政権の対日政策に独善的だと批判が強まる
日本企業の賠償を韓国政府傘下の財団が肩代わりする内容で、これを機に日韓首脳のシャトル外交が復活し、昨年だけで7回の首脳会談が行われた。日韓間の往来は飛躍的に増えているだけに、日本の経済界からは「野党の勝利で、日韓関係が再び悪化するのではないか」といった不安の声も聞かれる。
日韓の外交官や専門家の間では、総選挙での敗北を受けても「尹氏の対日政策が変化することはない」との見方が支配的だ。韓国政府関係者は「尹氏にとって日韓関係の改善は政治的な信念であり、世論に左右されない」と言い切る。
■「屈辱外交」の批判も
だが、解決策を巡っては、韓国内で「日本への一方的な譲歩だ」との批判が根強く、共に民主党などは「屈辱外交」との言葉を使って強く批判した。今回の与党敗北の背景には、批判に耳を傾けようとしない独善的な尹氏の政治スタイルへの批判があり、対日政策もそのひとつとして、野党が今後攻勢を強めてくることが予想される。
日韓関係に対する尹氏の意思が揺らぐことは考えにくいが、財団への新たな寄付を呼び掛けるなど、具体的な動きは難しくなるだろう。元徴用工や慰安婦問題で「日本企業や政府の謝罪と直接の補償」を求める声が高まることも考えられる。韓国を「パートナー」とする日本は、関係改善を一方的に歓迎するだけではなく、尹政権が直面する課題にどう対処するか共に考える責任があることを忘れてはならない。 (つづく)
(佐藤大介/共同通信編集委員兼論説委員)