統一球騒動の引き金ひいたのは「携帯電話水没事件」だった
その瞬間、ホテル中の視線が小柄な初老の男性に集まった。ロビーのラウンジでコーヒーを飲んでいたその男性が、足を踏み外して転倒。客席を囲むようにデザインされた、幅1.5メートルほどの溝にすっぽりと横になってはまってしまったのだ。溝には水が張ってあり、男性は頭から足までビッショビショになった。
「引きつった笑いを浮かべながら立ち上がった濡れねずみは、NPBの下田事務局長(当時)でした。6月10日に都内ホテルで行われたプロ野球実行委員会が終わった直後のことです。思えば、これが球史に残る大騒動となったあの『統一球問題』の引き金になった。すぐに近くのユニクロに行って買った下着、ズボン、白のポロシャツに着替えた下田さんはバツが悪そうに笑っていましたが、結果的にこれが彼の笑顔を見た最後になりました」(マスコミ関係者)
統一球問題が勃発したのは、この翌日の6月11日だった。仙台で行われた選手会との事務折衝。この席で選手会から突き上げられた下田事務局長は、統一球の反発係数を秘密裏に調整していたこと、その事実をコミッショナーも了解していたことなどを白状したのだ。