「のろぼんろく」にプロ野球の将来とテレビの未来が潰された
プロ野球オールスター第2戦の甲子園マウンド、初回に大谷が球速160キロ、161キロと続け、さて日本最速163キロのストレートを投げ込もうとした瞬間、後ろから腰のあたりをガシッと支えて誰かが、彼の耳元で囁いた。
「今日はそれぐらいにしとけ、次の165キロを俺が打ってやる」
大谷は試合後、取り巻く記者たちに言った。
「ですから、僕は力を抜きました」
スポーツ記者たちが詰め寄る。後ろからガシッと支えられたんだから味方の野手だろう。驚異的な腰のバネでライナーを左中間席深部に打ち込んだホークスの柳田? オリックスの超人、糸井? 犯人が判明した。これから大谷と名勝負を繰り広げたいと願う強打者たちの意思が、彼の後ろで言ったのだ。強打者のヒトダマが大谷の後ろまで忍び寄って言わせた。
これ、わたくしの夢の中の話である。
それぐらいものすごい試合だった。快刀乱麻の大谷、変化球でキリキリ舞いさせる金子に、セ・リーグも負けていない。坂本や堂林もホームランを打って対抗する。まさに真夏の祭典は燃え上がった。試合後のMVPは誰だ? アナウンサーもハイテンションで再三言った。