記録分析のプロ解説 黒田が米で勝ち越せなかった2つの理由
63試合の結果は8勝43敗。勝てなかったのは当然のことで、最多勝2回のバーランダー(タイガース)でさえ1勝30敗(同じく最近5年間の援護点2点以下の成績)にすぎないのだ。黒田が79勝79敗と勝ち星が伸び悩んだのは、味方の得点不足という外因が浮かび上がるのだ。
■常に緊張を強いられる守備陣
では、なぜ黒田が投げると打線が沈黙するのか。それは投球スタイルという内因と無縁ではないと思う。「動くボール」のツーシーム、カッター、スプリットを低め左右へ散らし、打たせて取るのが黒田の持ち味。それは初登板のヤクルト戦で披露されたとおりで、ボール半個分バットの芯を外す魔球はこれからも他球団の脅威となるだろう。
しかし、動くボールはキレを欠いた日は絶好球に変わる。ストレートより球速が落ちるため狙い打ちされるのだ。メジャーに行ってからカーブを使わなくなったことが僕は気に入らない。チェンジアップを持たずタイミングを外す球がないため単調。ピンチに強打者を迎えても打たせて取る配球を変えないため、守る側は常に緊張を強いられ、野手は疲労感を覚える。この欠点が野手の攻撃リズムを狂わせ、打撃意欲を低下させていた可能性を指摘したい。