クロマティ語る野球人生最初で最後の「甲子園3連発ショー」

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このときばかりは掛ける言葉なし

 3人のホームランにスタンドが酔う中、王監督が投手交代を告げた。2番手鹿取が佐野を遊ゴロに打ち取り、ナインはベンチに戻った。

「槙原は、ベンチに戻ってからも、ロッカールームでも、ショックでボー然としていた。オレだってそうだし、ベンチのみんながショックで固まっていたよ。普段だと、こういうときに声を掛けるのがガイジンの役割だったりするけれど、(日本人はそっとしておくんだよな)、このときばかりは掛ける言葉がなかったな。今振り返ると、あの試合で阪神の優勝が決まった、という気がするね。負け慣れている阪神と阪神ファンが、奇跡を信じ始めた最初の試合だろ。もちろんあの当時は、そんなこと思ってもいなかったけどな。だって開幕4試合目だもの。まだ夜は肌寒いし、シーズンはこれからという時期。いつも通り、悪いことは忘れて次というのがプロ野球選手というもんさ。それにしても3連発なんて、この時以外やられたこともないし、やったこともない、と思う。忘れているだけかもしれないがね。いずれにせよ、この3連発が、オレが目の当たりにした唯一のものさ」

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