強豪国苦戦続き ロシアW杯で格差是正の法則が働いている
セイバーメトリクスの祖、ビル・ジェームズは小冊子「野球抄1983」の中でこう書いている。
〈この世にはマイナス方向の力が存在して、強いチームと弱いチーム、先制したチームと追いかけるチーム、すぐれた選手と劣った選手の格差を是正する〉
僕なりにこの言葉をかみ砕くならば、こういうことになる。
リーグ戦を続けると、上位チームと下位チームの差は近づいていく。強いチームと試合をこなしていくうちに、弱いチームはその強さに慣れる。そして、自らの弱点を長所に変えようという工夫を凝らす。強いチームは、そうした変化に対して心理的に追い込まれていく。そして、単純な力の差ならば、10試合やれば1試合しか勝てない強者に対しても、実際に対戦してみると2、3試合は互角以上にやれてしまう――。
今回のW杯はそうした事態が起きている。
優勝候補のドイツ代表の敗退。アルゼンチン代表の苦戦。ブラジル代表でさえも、最終戦に敗れれば1次リーグ敗退もあり得た。
ビル・ジェームズが念頭に置いたのは、長期のリーグ戦での戦いであり、W杯のような短期決戦ではない。ただ、現在はデータ分析という武器がある。ビデオを解析することで、ある程度のシミュレーションが可能となる。そのため、リーグ戦を経たような弱者の兵法が当たっている。