楽天・田中将の右肘を蝕む地元ファンの重圧と米再挑戦願望
劇的に変わったスプリット多投の不安
田中はヤンキース時代、スプリットを多投、これを生命線としていた。米サイトの「Views from 314Ft.」によれば、14~18年までのスプリットの使用割合は実に4分の1以上にあたる28%。メジャーの打者は、初球から積極的に振るケースが多いから有効だったが、日本の打者はメジャーのそれと比べて選球眼が良く、ファウルでカットする技術が高い。田中がヤンキース時代と同様、日本でもスプリットを多投する投球スタイルで臨んだ場合、通用するとは限らないのである。
右肘も不安材料だ。「唯一、心配な点があるとすればケガです」と、前出の岡島氏がこう続ける。
■小さくて軽い球には落とし穴が
「経験豊富な投手だけに自分を見失うようなことはないと思いますけど、田中に対する地元ファンの期待はものすごいものがあります。それに将来、メジャーに復帰する意思があるとすれば、それこそ結果を残すことが重要になってくる。やらなければという思いがプレッシャーとなって、無理をすることになりかねません。まして、日本の統一球はメジャーの公認球より小さくて軽い。自分の経験から言うと、ボールそのものの扱いは問題なくても、小さくて軽い分、腕が振れるようになる。調子がいいと感じるので自然と力が入り、ガンガン投げてしまう。そうなったときの右肘への負担が心配です」
田中はメジャー1年目の14年、右肘靱帯の部分断裂が発覚。トミー・ジョン手術を回避して、PRP(多血小板血漿)療法という保存療法を選択した。これはあくまでも患部の悪化を防ぐためであって、部分断裂した靱帯が元に戻るわけではない。
つまり田中の右肘の靱帯は不安を抱えたままだし、それが肘の状態をどこよりも把握するヤンキースが再契約を渋った理由ともいわれる。
古巣に戻ったことで生じるファンの期待、ゆくゆくはメジャーに復帰したいという願望がプレッシャーや負担になり、もともと不安な右肘に襲いかかる可能性もあるのだ。