田中将大がMLB残留より楽天を選んだ「1年後の思惑と計算」
昨シーズンでヤンキースとの契約を終了した田中将大(32)の楽天入りが28日、正式に決定した。
もっとも田中にはメジャー球団のオファーがないわけではなかった。ヤンキースは見向きもしなかったらしいが、それ以外、5球団前後のメジャー球団が正式なオファーをしたようなのだ。本人はそれでも古巣の楽天を選んだわけだ。さる放送関係者に言わせると、「田中にはメジャーで10年プレー、その後、自分を育ててくれた楽天に戻る青写真があると聞いている」そうだ。10年まであと3年ある上、昨年までの7年間で78勝。あと22勝で100勝に届く。それより何より、強くて人気もある老舗名門球団の先発を務めながら、世界一どころかワールドシリーズに出たことすらない。むろん田中ひとりの責任ではないにせよ、メジャーでまだ不完全燃焼なのは想像に難くない。なのにこのタイミングで古巣に戻るのはなぜか。
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■心身のダメージ
「楽天に復帰するからといって、本人はおそらくメジャーを諦めたわけじゃない。2年契約ながら1年後のメジャー入りを視野に入れているはずです。ただ、ヤンキースで7年間、フル回転した心身のダメージはハンパじゃないはず。とりあえず1年間は息抜きをしたいのではないか」と、ア・リーグのあるスカウトがこう続ける。
「ヤンキースはメジャー30球団の中でも、飛び抜けてファンやメディアがシビアです。実際、昨年のプレーオフ、地区シリーズのレイズ戦で打ち込まれて敗戦投手になったとき、ニューヨークのメディアは『戦犯』『これがヤンキースでの最後の登板になる』とボロクソでしたからね。ファンも辛辣。ヤンキースタジアムでは味方選手をヤジる観客も珍しくない。相当なストレスを抱えたはずです。田中はしかも、右肘に靱帯の部分断裂という爆弾を抱えながらフル回転してきた。肉体的にもかなり、しんどかったはずです。それでもヤンキースにいれば耐えもしたでしょうけど、オファーはないし、他球団の評価もそれほど高くはない。ならば、言い方は悪いが、1年間、気心の知れた古巣で充電、というかノビノビプレーしたいと考えたのではないか」
■開幕も先送りの可能性
イチローはかつて、ヤンキースで7年間プレーした松井秀喜について「人として、人格的な部分で良い人間でなければヤンキースに長くいられない。(松井が)7年間もいたのはすごい」と言ったことがある。メジャー屈指の注目球団でプレーする難しさを自身も経験したからに他ならないし、同様に7年間、ヤンキースでプレーした田中にもかなりの負荷がかかったに違いない。
米国のコロナ禍は日本以上に深刻だ。メジャー15球団の施設があるアリゾナ州の各自治体の首長らは、大リーグ機構にキャンプの延期を要望したほど。キャンプが通常通りに行われないばかりか、4月1日の開幕まで先送りされる可能性が出てきた。田中が無理をして今季、メジャーでプレーする必要はないと判断したとしても不思議ではない。
日本人選手のいない球団
「代理人筋から聞いた話ですけど、田中にはできれば日本人選手のいるチームでプレーしたくないという思いもあったようです」と、米国にいる特派員のひとりがこう言った。
「郷に入れば郷に従えというように、せっかく米国でプレーするのだからメジャーの環境に馴染みたいのでしょう。同じチームに日本人選手がいれば、どうしたって日本人同士でコミュニケーションを取ることになる。年上の選手がいればなおさら。気も使うし、余計なストレスを抱えることになりますからね。田中に対しては、すでに日本人選手のいるチームからのオファーがあったのかもしれません」
楽天入りには田中なりの思惑と計算があったというのだ。