1年目のキャンプから清原は「あと1センチ、横へ投げていただけますか?」とコースを指定した
清原和博のプロ1年目、担当スカウトの鈴木は、高知・春野キャンプで練習に付き添った。
個別の打撃練習でティーを上げ、守備練習ではノッカーもやった。
「僕と川岸良兼だったら、どっちの方が飛ばしますかね?」
1980年代、ゴルフ界で怪物と呼ばれた川岸と清原は同世代。野球界の怪物と鈴木は、練習の合間にこんな雑談をしていた。
「愛嬌はあるけど、普段はみんなとワイワイやるようなタイプには見えませんでした。野球に関しては、とにかく繊細な選手でした。バットは丁寧にケースに入れていたし。昔の野球人というかね。野球道具は大事にしていました。一度、死球を当てられてバットをブン投げましたけどね(笑)」
ある日の居残り特打、鈴木がトスを上げていると、汗びっしょりの清原が「あと1センチ、こっち(横)に投げていただけますか?」と、要望してきた。
「1センチ単位で細かくコースを設定しながら打ち分ける。プロで何年もやっている選手みたいで、高校生離れしていましたね。逆方向に長打を打てるのは、練習からコースを意識して、打っているからこそなんだと、改めて納得しました」