「日本の雇用が危ない」西谷敏ほか著
■安倍政権の「労働規制緩和」を徹底批判
アベノミクスは小泉改革を引き継いで「規制緩和」を掲げる。その手法のひとつが「特区」方式。通常の法律のしばりをくぐりぬける特例地区を設け、試験的な施策を取り入れようというわけだ。
そこで出てきたのが「雇用特区」。そのココロは「普通は各種の労働者保護政策のおかげでやりづらい馘首(かくしゆ)を、企業側に好都合なかたちで実施する」というもの。本書はアベノミクスに批判的な全国の経済学者たちが集まって安倍政権の手法のカラクリをあばこうという論集だ。
もっとも一般書ではなく、あくまで専門書だから議論のハードルは高い。中間管理職の残業を事実上無制限にする「ホワイトカラー・エグゼンプション」、正社員の中に構造的に格差を生み出そうとする「ジョブ型正社員」制度、近ごろ目立つようになってきた「解雇権」の乱用問題など、まさにいま現在の課題事項がくわしく解説、分析、批判されている。労組担当者などはこれを精読することで交渉の質が大いに上がるに違いない。
(旬報社 1850円)