「枕元の本棚」津村記久子著

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 幼いときから何度も眺めていた本や、創作意欲をかきたてる刺激的な本など、芥川賞作家がセレクトした58冊の読書エッセー集。文学史をなぞるような本を多く選んでいるかと思いきや、さまざまな実用書や図鑑、経済書、スポーツ評伝などがずらりと並ぶ。

 たとえば、「ギリシア神話小事典」(バーナード・エヴスリン著 小林稔訳 現代教養文庫)の章では、女好きな神様や短気で残忍な女神などの物語を、スポーツ新聞の芸能欄を読むような気楽な気持ちで読んでいることを告白する。そうかと思えば、画集「エドワード・ホッパー アメリカの肖像」(ヴィーラント・シュミート解説 光山清子訳 岩波書店)の章では、見られることのよそ行きさや反発もなく、ただ生きている人間とその生活が不意に描かれたホッパーの絵こそ、著者が小説を書く上でお手本にしたいものであることが語られる。

 本書を通して作家独自の本の読み方を知ると、さらに本が読みたくなりそうだ。(実業之日本社 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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