「病巣」江上剛著
主人公は、総合電機メーカー芝河電機に勤める瀬川大輔。赴任先のミャンマーの発電所を落札するため、中国・韓国に勝てる受注額を巡ってギリギリの攻防をしていたが、突然本社から赤字額での落札の指示が飛び、納得のいかないまま受注を勝ち取った。
どうやら裏で日本政府の強い意向が働いていたらしい。
その後、日本に戻った瀬川だったが、当然行われなければならないはずの損失引当金の処理が経理で行われていないことを知り、抗議したものの上司に有無を言わさず却下されてしまう。さらに、そんなやりとりが行われたことを知ったある社員が、不正経理の証拠となる書類を瀬川に託したまま自殺してしまった。実態を知り愕然とする瀬川は、悩んだ末にある大きな決断に踏み切るのだが……。
社会問題を映し出す経済小説の分野で定評のある著者による最新作。粉飾決算がどのように始まり、組織がどう崩壊していくのか、まるで内部潜入したかのように描写されている。(朝日新聞出版 1600円+税)