“望まない妊娠”で孤立する女性たち
「漂流女子」中島かおり著/朝日新聞出版 720円+税
妊娠した女子高生が学校のトイレで出産したり、産んだばかりの赤ちゃんを遺棄してしまうニュースを見聞きすると、「そもそもなぜ避妊しなかったのか」「なぜ周囲に助けを求めなかったのか」「自業自得だ」といった批判が巻き起こることが多い。
しかし避妊の失敗は、本人の年齢の若さ、それに伴う理性の未熟さ、知識や道徳の欠如だけでは決して説明できない。相手の男性から強引に押し切られて、断り切れずに避妊なしでのセックスをしてしまう女性もいる。また性暴力や性虐待の結果、不幸にも妊娠してしまうこともある。
著者は、そういった望まない妊娠に直面した女性からの相談を受け付けている団体「にんしんSOS東京」の代表である。学校や自宅での出産、妊婦検診未受診での飛び込み出産、生後0日目の赤ちゃんの虐待死、出産後の遺棄などを防止することを目指して活動している。
本書の中では、10代の妊娠、未婚での妊娠、不倫での妊娠などによって社会の中で孤立してしまった女性が大勢登場する。彼女たちの抱えている事情はさまざまだ。
相談員は上から目線で説教や助言をするのではなく、まずは本人の困惑や混乱を受け止めた上で、相手の心情に共感しながら、「産んで育てる」「産んで育てない(特別養子縁組など)」「産まない(人工妊娠中絶)」といった選択肢の可能性について中立的な立場から情報提供を行い、「本人がどうしたいのか」を最優先にした上で、慎重に自己決定するように促していく。妊娠相談が、漂流している彼女たちが社会とつながるためのきっかけになることがあるのだ。
「すべての命に付き添う」という著者の決意からは、「付き添うべき命」と「そうでない命」を選別してきた私たちの社会の傲慢さが浮かび上がってくるだろう。