「画鬼と娘」池寒魚著
明治22年4月26日、狩野派最後の絵師・河鍋暁斎が息を引き取った。享年58歳。その日、そこが暁斎の自宅とも知らずに男が訪ねてきた。応対した暁斎の娘とよ(暁翠)から事情を聞いた男は遺体に手を合わせ、そそくさと帰っていった。暁斎の弟子で、工部大学校で教壇に立つお雇い外国人コンデルを訪ねてきた男は、画家の五姓田義松だった。
一方、訃報を聞いて駆けつけた弟子の小林清親は、コンデルと暁斎が「枯木寒鴉図」に法外な価格をつけた理由について話を始める。さらに幇間(ほうかん)の露八や、探検家の松浦武四郎の妻ら弔問客の相手をするとよの脳裏に父との思い出が蘇る。(表題作)
ほかに、五姓田と父、高橋由一と息子の3組の画家親子の関係と名作誕生の舞台裏を描く連作時代集。
(集英社 620円+税)