「天を灼(や)く」あさのあつこ著
夜、伊吹藤士郎は雨でぬかるんだ山道を急ぐ。伊吹家は代々、天羽藩の大組組頭を務めてきた家柄で、父の斗十郎は執政入りも確実視されていたが、20日前に大目付の配下に捕らえられてしまった。不安な日々を過ごしていた伊吹家に、その日、城からの使者が来て、斗十郎は市中一の豪商と結託して私腹を肥やし、藩の財政を損耗させた罪で切腹、伊吹家は屋敷を没収、家人は領内所払いを命じられたのだ。
父の潔白を信じ、煩悶する藤士郎の前に斗十郎の言付けを持ってきたという若者・柘植が現れる。斗十郎の愛用する佩刀(はいとう)を持参して、明朝までに「能戸の沢」と呼ばれる山の牢屋敷に会いに来てほしいというのだ。
元服を目前に控えた藤士郎を主人公にした青春時代小説3部作の第1弾。
(祥伝社 750円+税)