「対岸の家事」朱野帰子著
詩穂は、14歳で母を失って以来、すべての家事をこなしてきた。父は、それが当然のような態度で、一度も代わって家事をすることはなかった。
高校卒業を機に、詩穂は父に黙って家を出て美容学校の寮に入る。美容師として働いていたときに出会った虎朗と結婚して、娘の苺を授かった詩穂は、仕事と家事の両立は自分には向いていないと、専業主婦となる。
ママ友をつくりたいが、周囲は共働き世帯ばかりで孤独を感じる。マンションの隣室に暮らす共働きの礼子は、当初はそんな詩穂を時代遅れだと感じていたが、2人の子育てに疲弊し、最近では限界を感じている。そんな中、詩穂は公園で育児休業中の官僚・中谷と知り合う。
育児や家事を担う人が抱える孤独をそっと癒やしてくれる長編小説。 (講談社 924円)