著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「わたし、定時で帰ります。ライジング」朱野帰子著

公開日: 更新日:

 生活残業とは、意図的に残業することで残業代を増やすことを言う。ではなぜ、そんなことをするのか。そうしなければ生活できないからだ。要するに基本給だけでは生活できないという現実がある。もうひとつは、遅くまで会社に居残って仕事をしないと労働意欲がないものとみなされる、という側面もあったりする。だから生活残業はなかなかなくならない。

 そういう現実、風潮に敢然と立ち向かって登場したのが、本書のヒロイン・東山結衣だ。このヒロインは最初から(つまり就活しているときから)、私は定時で帰ります、と宣言して登場した。シリーズ第3弾の本書でも、東山結衣はまだ闘っている。

 定時で帰る、と宣言しているヒロインを雇うくらいだから、結衣が働くネットヒーローズは理解のない会社ではない。しかし、それはマスコミ向けのポーズという面もないではなく、内部ではよく思われていない現実もあったりする。

 さらに今回の敵は創業時の上司たち。高給取りのくせに働かないのだ。既存権益を守ることしか考えず、新しい体制をつくることには興味を持たない。ネットヒーローズは、企業のデジタル方面の支援やコンサルティングを主な業務とする会社だが、中身まで新しいわけではないのだ。しかも恋人の晃太郎が仕事大好き人間で、早く帰らないから大困惑。問題があまりにも多すぎて、大丈夫か結衣。

 (新潮社 1540円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭