「ものがたりの賊(やから)」真藤順丈著
1923年9月1日、帝都を大地震が襲った。大火によって東京は焼け野原と化し、戒厳令が発布され、警察に代わって軍部が東京の治安維持に当たることに。デマに扇動された暴徒が朝鮮人たちを襲う。
そこに負傷した朝鮮人たちを救護しようとする者が現れた。彼らが負傷者の傷口に手をかざすと、そこから傷が癒えてゆく。それは「坊っちゃん」「聖」などと呼ばれる人たちで、かつて瀕死の重傷を負った時、「竹取の翁」から輸血を受けたことから「血の恩寵」を受け、不老、長寿となったのだ。
日本文学の名作の登場人物が、軍部の怪しい動きや致死的な感染症に脅かされる帝都で大活躍する奇想天外なエンターテインメント。
(文藝春秋 2200円)