著者のコラム一覧
山上たつひこ

1947年、徳島県生まれ。70年「光る風」で注目され、72年「喜劇新思想大系」でリアルな画風のギャグを確立。74年連載開始の「がきデカ」が社会的ブームに。88年から小説執筆を開始。2014年、原作を担当した「羊の木」(いがらしみきお画)が文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。著書に「蝉花」「火床より出でて」「大阪弁の犬」「王子失踪す」ほか。

(119)幻覚であればよかったのに

公開日: 更新日:
イラスト とり・みき

 虫を泣かせてしまった。綾瀬の当惑が空気に伝染した。

 緑の飛蝗が飛んだ。強いジャンプ。そして美しい跳躍だった。

 綾瀬は見上げた。どこにもない岩の顔を仰いだ。見たか。ぼくにも性根がある。

 アトリエが滞っている。

 製作途中の作品が綾瀬によそよそしい。不…

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