「歌う不動産王」千昌夫 巨額負債で経営破綻
<2000年2月>
総資産3000億円ともいわれ、「歌う不動産王」の異名をとった千昌夫。80年代には事業と資産を急拡大したが、バブル崩壊とメーンバンクの破綻とともに、一転して「歌う借金王」と呼ばれるようになった。
2月4日、東京地裁に「アベインターナショナルベンチャーズコーポレーション」という会社が経営破綻し、特別清算を申請。1034億円という巨額の負債を抱えて事実上倒産した。経営者は阿部健太郎。歌手の千昌夫(当時52)である。
歌手として飛び回る一方で、手広く事業を広げていた千だが、出発点は160万枚の大ヒット曲となった「星影のワルツ」の印税。これを元手に70年、仙台市郊外に山林5万坪を購入したことに始まる。弱冠22歳の時だった。この土地が東北新幹線の着工が決まり、地価は10倍に上昇する。
千はこれを担保に金融機関の融資を受け、次々と土地を買い増していく。72年には「アベインターナショナル」を設立し、次から次へと不動産の買収と事業の拡大を続けた。80年代末にはマンションや貸しビルなど110カ所にも及ぶ賃貸物件を保有。アパートの賃貸収入だけで年間40億円といわれた。