「歌う不動産王」千昌夫 巨額負債で経営破綻
さらに、居酒屋チェーン「せんや」をはじめ、東京・港区や渋谷区の一等地に貸しスタジオを経営。香港、イギリス、オーストラリア、ハワイなどのホテルも買収し、200人の社員を抱えるほどになった。総資産は2000億円とも3000億円ともいわれ、コロッケのモノマネでは「カネ持ってんどー」が十八番になるほど。88年には事業の多忙を理由に歌手の休業宣言も行った。
だが、90年代に入ると土地が値下がりし、不動産を担保に借金して次の不動産を買うビジネスモデルは一気に破綻してしまう。91年7月には2800億円の借金リストがマスコミに出回り、経営危機が伝えられる。その後、借金は2500億円ほどに。94年ごろまでに資産を売却し、1000億円ほどに負債を圧縮したものの、さらに地価の下落が続き、不動産売却で経営再生しようとする計画は頓挫する。また、悪いことに98年にはメーンバンクの日本長期信用銀行が破綻。一時、国有化を経て米リップルウッド社に売却された。そんな流れの中、巨額の債務を抱えた千の会社も清算を余儀なくされた。
1000億円を超える負債を抱えた千の会社だが、結局、東京地裁に提出した「6年間で1億6000万円を返す」という再生計画書の条件を債権者がのみ、結局のところ、巨額の借金はほとんどチャラになり、千は無事返済を終えた。東日本大震災で甚大な被害を受けた故郷・陸前高田市。ニュースの映像で町にぽつりと残った7階建ての鉄筋造りのホテルが映されたが、これは「キャピタルホテル1000」という出身地に建てたビジネスホテルである。今では元の歌手に戻った千が、人手に渡ったこのホテルの映像をどんな思いで見つめたろうか。
◇2000年2月 9日、荒井注が肝不全で死去。71歳。13日、グリコ・森永事件の時効が成立。22日、ヤフージャパンの株が1億6790万円の最高値を東京証券取引所で記録。