五木寛之氏「親鸞の最後は無造作に書く。それは決めていた」
壮大なスケールで描かれた小説「親鸞」。その「完結篇」が先月、講談社から出版された。平安末期から鎌倉時代、激動の世を生き抜いた親鸞は90歳で静かに人生の幕を閉じる。その「死に際」に作者が込めた思いとは?
――3部作、全6巻という大作ですが、もう息もつかせないというか、一気に読みました。
これは新聞小説で、北海道新聞から琉球新報までの30~40数社、全部合わせると大変な数字で驚きました。新聞小説は明治以降、何度か全盛期があるんですが、ここ10~20年くらいはお飾りのような存在、位置づけの新聞社もあったんじゃないでしょうか。僕は人がやってないことをやるのが好きだから、そこまで新聞小説が見放されているんなら、やってやろうじゃないか、という気になりましてね。あとから単行本にするとか一切考えずに一日一日、3枚足らずの物語の中に起承転結をつくって、明日はどうなるんだろう、待ちきれないという状況をつくってやろうと。密かな志を抱いて書いたんです。書き終えて、新聞小説に殉じたというか、最大限のロイヤルティーを尽くしたという気持ちです。