「釣りバカ」人気の“功労者”西田敏行の起用はファンへの仁義
【連載コラム「TV見るべきものは!!」】
「釣りバカ日誌」とは大胆な企画を打ち出してきたものだ。「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~」(テレビ東京系)の話である。原作は今も連載中の人気コミックだが、映画のヒットシリーズとしても知られている。あえてドラマ化するには勇気が必要だったはずだ。
今回、いくつかの仕掛けが功を奏している。まず設定を、ハマちゃんこと浜崎伝助の新入社員時代にしたこと。映画で西田敏行が演じてきた“中年ハマちゃん”のイメージから離れ、新鮮さと共に若い視聴者層にもアピールできるからだ。
次に配役だが、主演の濱田岳もさることながら、スーさんこと鈴木建設社長・鈴木一之助に西田敏行を持ってきたことが大きい。「釣りバカ」と聞けば西田の顔が浮かぶほど、作品にとっての“功労者”だ。この起用によって往年の映画ファンたちに“仁義を切った”ことになり、ドラマ版への呼び込みにもつながった。
放送開始直後は、西田がスーさんであることに戸惑ったが、すぐ慣れてしまった。映画で三国連太郎が演じたスーさんとは一味違うちゃめっ気も魅力だ。加えて、老舗すし店で若い職人が握るすしを、大将が見守っているような安心感とほほ笑ましさがある。
先週ハマちゃんは、スーさんが、自分が勤める会社の社長であることを知ってしまった。でも2人の関係は変わらない。みち子さん(広瀬アリス)との笑えるラブストーリーもこれからだ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)