“怪優”本田博太郎が語る「酒癖悪い人は人間性に問題あり」
ところが、「近松」と続いて出演した蜷川さん演出の「ロミオとジュリエット」でゴールデン・アロー賞を受賞して風向きが変わった。そしてようやく少し息がつけるようになり、その後、敬愛する岡本喜八監督、工藤栄一監督と出会えたのも幸運でした。
おふたりはすでに鬼籍に入られていますが、30代、40代の生意気で不遜でうぬぼれ屋だった頃、仕事に対する姿勢や生き方と同時に、酒席での嗜みも教えていただきました。共通するのは背中に耳や目があるんじゃないかってぐらい、周囲の方々に気を使ってること。そして数々の名作、ヒット作を生みだした巨匠なのに酒が入っても人柄が変わらないんですよ。
飲むと人格、品格がわかるもの。酒癖が悪い人はそもそも人間性に問題がある。「正体見たり」ってヤツです。
しかし、岡本監督も工藤監督も酒席での会話に哲学、人情、人への優しさがあふれていて、しかも飲み方がスマート。すごくステキなんです。だからご一緒させていただくのが楽しくて、得るモノも多いし、大きかった。
俳優では大先輩の大滝秀治さんの飲み方に憧れましたね。大滝さんの行きつけは渋谷駅のすぐそばの立ち飲み屋。11年には文化功労者、13年には昨年亡くなられた高倉健さんの映画「あなたへ」で、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞された名優にもかかわらずです。