79歳の大林宣彦監督 戦争前夜と現代日本の“類似性”に警鐘

公開日: 更新日:

 尾道3部作など、ノスタルジックな青春ドラマの名手で「時をかける少女」をはじめとする全盛期の角川映画ブームを牽引した立役者。

 と同時に前作「野のなななのか」など、戦争を題材にしたメッセージ性の強い作品でも評価されている。「花筐――」はその集大成というべき意欲作だ。

■「7歳の頃、さんざん吸ってきた空気と似ている」

「じつは『花筐』を監督デビュー作にしたくて最初の脚本を書いたのが70年代。でも当時はだれも関心を示さなかった。高度成長時代は皆モノとカネの夢ばかり見て、戦争なんてまるでなかったことになっていた」

 7歳だった終戦時、進駐軍の蹂躙を前に最愛の母親と2人、短刀で心中する直前までいった壮絶な戦争体験を持つ。「ああ、母ちゃんが殺してくれるなら優しく痛くなくやってくれるなとホッとした」と振り返る、その時の覚悟と達観が、ブレない平和への信念の礎となっている。そんな大林監督は、戦争前夜を描いた映画と現代日本の類似性に警鐘を鳴らす。


「最近ではテレビで正直にものを言うだけで退場させられるけど、僕が仕事をしてきた頃はもっと風通しが良かった。今の日本は7歳の頃、さんざん吸ってきた空気と似ています。20年の東京五輪だって開催できるかどうか」

 かつて息子のように可愛がってくれた黒沢明監督からは「映画には旬がある」と教えられたという。自身の「花筐――」も脚本執筆から40年以上の時を経て“旬”を迎えたと語る大林監督が感じる危機感を、戦争を知らない世代の日本人も共有すべきだろう。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動