役者の仕事はインナーボイスをどれだけさらけ出せるか
碓井 ドラマの生命線は演技であり、芝居であると。それをどんな映像で、つまりどんなカット割りで見せるかということ以前に、しっかりと芝居を演出することが重要なんですね。ところが、演技をつけることに関して、演出家自身が素人だったりすることが多い。
倉本 僕も富良野塾というのをやって、26年間、役者を指導してきましたが、苦労の連続でした。スタニスラフスキー(ロシア・ソ連の俳優、演出家)から米国のメソッドをベースに教えたつもりなんですけれど。
碓井 スタニスラフスキーというのは、ロシア革命やレーニンの時代に、役者が役柄の内面や感情を追体験することを提唱した人ですよね。教育法が「スタニスラフスキー・システム」と呼ばれた。
倉本 例を挙げれば、役者がものをしゃべらないでいるときに何を考えているか、頭の中をどう見せるか。役者はインナーボイスをどれだけさらけ出して見せてくれるかっていうのが仕事なんですね。それができてこそ演技の幅が出てくる。それを演出してくれないんですよね、演出家も。