「小林多喜二」特別高等警察に虐殺されたプロレタリア作家
1974年 今井正監督
特別高等警察(特高)に虐殺されたプロレタリア作家・小林多喜二の生涯を描く。先週、DVDが発売された。
貧農の家に生まれた多喜二は伯父の厚意で小樽高等商業(現・小樽商科大)に進学して拓銀に就職、勤務のかたわら小説を書き始める。親の借金のために売られたタキという女性の借金を清算して家族として迎え入れ、文学活動のほか1928年の普通選挙では労働農民党候補の応援弁士を務めるなど社会運動に情熱を注ぐ。「一九二八年三月十五日」「蟹工船」などの作品で搾取と侵略戦争を批判したことから特高の標的となり、33年2月20日逮捕。東京・築地警察署で凄絶な拷問を受けるのだった……。
多喜二は31年に日本共産党に入党し、地下に潜伏しながら作品を発表した。本作は多喜二をめぐる3人の女性、彼の文学作品と政治活動の関連性にふれつつ天皇制ファシズムの実相を描いている。帝国主義に異を唱える常識人が官憲の弾圧を受ける光景は実に恐ろしい。
日本では、25年に治安維持法が成立。三・一五事件(28年)の大弾圧などで多くの人々が拷問を受けて殺された。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の最新の調査によると、死者は93人にのぼる。