追悼・加藤剛さん 70年代に憂いた正統派の二枚目俳優
加藤さんの真の凄さを実感したのは、それほど過去の話ではない。「舟を編む」(13年)で、実直な二枚目が老いた姿となり、黙々と辞典の編纂(へんさん)に取り組む演技に襟を正した。遺作の「今夜、ロマンス劇場で」(18年)では、やせ細った体から振り絞ったかのような穏やかな声の向こうに、加藤剛の俳優人生がにじみ出て、目頭を熱くした。
加藤さん。時代の流れをものともせず、最後まで俳優人生をまっとうしてくださり、本当にありがとう。あなたの凄さがやっと分かりました。