雅楽師・東儀秀樹さん 宮内庁職員を辞めて後悔していない
宮内庁式部職楽部を辞めた96年の1月に、アルバム「東儀秀樹」をリリースしてデビューしました。ライブ活動はその3、4年前から。だから、当時はもっとあんなこともこんなこともやりたいと思い、周りからも求められるようになっていました。でも、公務員だから応えられないというのが悲しかった。
宮内庁職員らしくない僕の行動を、宮内庁内で問題にする人はもちろんいました。上司に「宮内庁職員の自覚を持て」と言われたり、コソコソ陰口を叩かれるのは日常茶飯事。でも、僕のことを嫉妬してるんだな、僕が後ろ指さす側じゃなくてよかったとまったくへこんでいませんでした。むしろ、個人的活動などで宮内庁の休暇をもらい、他の職員の演奏の配役に迷惑をかける方が嫌だった。楽団は全部で25人しかいない。だから1人が抜けると、調整が大変なんです。
辞めると伝えた時、宮内庁側からはものすごく引き留められました。でも、頭の中からはワクワクすることばかりが浮かんできて(笑い)。宮内庁を辞めても雅楽を大事にしたい気持ちは変わらないし、何とかなるだろうと何の保証もないのに自信がありました。辞めた後のことを考えて人脈を広げたりとか、そんなことは何もしていなかったんですけどね。「宮内庁職員だから面白がられている。宮内庁を辞めたらだれも見向きもしなくなるよ」と言ってくる先輩もいました。