雅楽師・東儀秀樹さん 宮内庁職員を辞めて後悔していない
■幼稚園の頃からビートルズに夢中
宮内庁の楽師になったのは母のアドバイスがあったから。母は奈良時代から楽師をしている東儀家の生まれ。雅楽の管楽器・笙をたしなんではいましたが、僕に雅楽を教えたりはしませんでした。ただ、両親ともに音楽が大好きで、家ではクラシックや映画音楽、ミュージカルがよく流れていた。僕は幼稚園の頃からビートルズに夢中だったし。それで自然と音楽に親しみロックやジャズ、ポップスにハマっていきました。
高校2年の時、将来はそういう現代音楽で食べていきたいと思っていたら、母が「雅楽にも目を向ければいいのに」と言うんです。それでとにかくやってみようと始めてみたら、どんどん追究したくなった。いろんな音楽に触れて育ったおかげで、篳篥でビートルズを吹くとか、決められたこと以外のこともやりたくなってしまって。
5年前に始めた「TFC55」の活動もそのひとつ。バイオリンの古沢巌さん、アコーディオンのcobaさんと組んだユニットで、全国で年間二十数本コンサートをやっています。ソロを合わせれば100本ぐらい。他に、中学や高校の芸術鑑賞会で雅楽に触れてもらう活動をしたり、講演をしたり。
フリーになっていなかったら、できなかったことばかりです。だから、後悔したことはありません。
(取材・文 中野裕子)