【追悼】高取英さん 過激で心優しき異端の劇詩人
マンガなどサブカルチャーに造詣が深く、無類の優しさで多くの人に愛され、思想の左右を問わず多彩な人脈を築いた。
私生活に関してはかたくなに秘密を守ったが、死去後、月蝕歌劇団の看板女優・白永歩美(写真)が高取氏の長女であることを公表した。高取さんの最期のイタズラだ。
師である寺山修司を心から敬愛し、寺山研究の第一人者であるのは言をまたない。くしくもフェイスブックに書き込んだ最期の言葉が寺山監督の映画「上海異人娼館」にエキストラで出た時のエピソードだった。
「墓は建ててほしくない。私の墓は私のことばであれば十分」と寺山が書いたように、高取さんも「私は無神論者。死んだらオシマイ。葬儀も墓も不要」とちゃめっ気たっぷりな笑顔で常々言っていた。時空を自在に往還した芝居を書いた高取さんだから、いつか街角でひょっこり出会うかもしれない。
こんなことを言えば、高取さんは「ハハハ、そんなことはないよ~」と笑うかもしれないが、それでもやっぱり言おう。
さらば、高取さん。いつかまたどこかで会いましょう……と。